帰納法とは
帰納法とは、実験結果などの事実から一般的な法則を推論することです。
例えば、カラスAは黒い。カラスBも黒い。...カラスZも黒い。という事実から「全てのカラスは黒い」と結論づける推論は、帰納法になります。
帰納法の問題点
しかし、A~Zまでのカラスを調べただけで、全てのカラスを調べたわけじゃないので、黒くないカラスが現実にはいるかもしれないし、今いなくても過去にいたかもしれず、未来に現れるかもしれません。その場合、A~Zのカラスが黒いことから「全てのカラスは黒い」と結論づけるのは、間違っていることになります。
このように、帰納法は常に正しい真理を見つけるわけではないので不健全であると言えます。そもそも帰納法は証明などではなく、推論の一種に過ぎず数学のように厳密に正しい真理を見つけるわけではありません。
「論理的推論」というWikipediaのページがあり、各推論が誰に利用されているかが書いてありました。
演繹 | 数学者 |
---|---|
帰納 | 科学者 |
アブダクション | 歴史科学者や診断専門医や探偵 |
帰納法を肯定することわざ
「一事が万事」
「一事が万事」の意味は、「一つの物事から他の全てのことを推し量ることができること」です。
「一事が万事」の類語
これの類語として、「一を以て万を知る(いちをもってばんをしる)」=「一を聞いて十を知る」がある。その意味は、「物事の一部を聞いただけで全部を理解できる」です。
帰納法を戒めることわざ・四字熟語
「一事が万事」とは反対の意味のことわざとして「一斑を見て全豹を卜す(いっぱんをみてぜんぴょうをぼくす)」があります。その意味は、以下に引用します。
豹の毛皮は、黄色と黒のまだら模様で全身が覆われている。その毛皮の一部を見て、豹は全身が黄ないし黒色であると断定することをいう。物事の一部分から、全体を推し量ることの愚かさを戒める言葉。 一斑を見て全豹を卜す | 会話で使えることわざ辞典 | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス
「卜する」の意味は、「うらなって、よしあしを判断する」ことです。(リンク:卜する(ぼくする)の意味・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書)
同じ意味の熟語に「全豹一斑(ぜんぴょういっぱん)」があります。その意味は、以下に引用します。
もののごく一部を見て、全体を推測したり批評したりすることのたとえ。見識がきわめて狭いことのたとえ。▽「一斑」は豹ひょうの斑点の一つ。「全豹」は豹全体。転じて、物事の全容のこと。狭い管から豹をのぞき、見えた一つの斑点から豹全体を類推するという意。「一斑全豹いっぱんぜんぴょう」ともいう。 全豹一斑(ぜんぴょういっぱん)の意味・使い方 - 四字熟語一覧 - goo辞書
数学ジョーク
帰納法とも関連するこんな数学ジョークがある。
天文学者、物理学者、そして数学者がスコットランドを走る列車に乗っている。天文学者は窓の外を眺め、一頭の黒い羊が牧場に立っているのを見て、「なんと奇妙な。スコットランドの羊はみんな黒いのか」と言った。すると物理学者はそれに答えて「だから君たち天文学者はいいかげんだと馬鹿にされるんだ。正しくは『スコットランドには黒い羊が少なくとも一頭いる』だろう」と言う。しかし最後に数学者は「だから君たち物理学者はいいかげんだと馬鹿にされるんだ。正しくは『スコットランドに少なくとも一頭、少なくとも片側が黒く見える羊がいる』だ」と言った。 数学的なジョーク - Wikipedia
終わりに
帰納法で推論しているのにそれが正しい前提で話をする人がいるけど、すぐに反例を思いつくし「厳密には正しくないよな」と内心思うことがままある。そういう人には帰納法は蓋然的だということで「全豹一斑」という言葉をぜひ知ってほしいと思う。